「自分から動ける人」と、「自分勝手に仕事を進めてしまう人」との微妙な差

「自分から動いてくれる人」と、「勝手に仕事を進めてしまう人」の差って、何なんですかね。

と聞いてみた。

社長は言葉につまったが、少しずつ話しだした。

「うーん、はっきりとした言葉にするのは少し難しいんだけど、こちらの安心感があるか、無いかのちがいかな」

「というと?」

「指示を待たずに自分から動いてくれ、というのはもちろん条件がある。ひとつはその人に与えられている権限をきちんと理解しているか。勝手に契約などされてはやっぱり困る。この人は権限をきちんと理解している、という安心感があれば、こっちの指示を待つ必要はない。」

「なるほど。それはそうですね。」

「あとは、周りの人への配慮が出来る人かどうか、かな。勝手に動く、ということは人によっては反感を持つ人もいる。これは社長がどんなに「自分から動いてくれ」といっても、一定数は保守的な人がいるもんだ。そういう人へ配慮しつつやってくれるといいんだが。揉め事を起こせば、周りからその人が孤立してしまう。それは困る。」

なるほど。

「ということは、結局「自分から動いて欲しい人」と、「勝手に動いてほしくない人」がいるということですね?」

と聞くと、

「そのとおりだが、そのように社内にアナウンスはできないだろう。平等という観点からは」

確かにそのとおりだ。

このように、「自分から動け」を真に受けないほうが良いことは、賢い大人なら誰しも知っている。

ただ、自分が「自分から動いて欲しい人」にカテゴライズされているか、「勝手に動いてほしくない人」にカテゴライズされているかを知るのは難しい。大人は人にハッキリ物を言わないからだ。

さらに、「勝手に動く人」はそういうことを気にするほど繊細ではない。

ということは、

賢い人は、その賢さ故にリスクを回避して「指示待ち」となり、勝手な人はその鈍感さ故に空気を読まず、「問題児」となる。

結果的に「指示待ち」が増え、一部の問題児が浮き彫りになるのは必然だ。

だから、「指示待ちになるな」とは、実際にはあまり意味のないアドバイス(?)だと思う。

経営者や管理職は、社員に「指示待ち」になってほしくなければ、やはり適切な人に明確に権限を預けなくてはいけない。

「うちの会社には自分から動ける人が少ない」と経営者や管理職が嘆くのは、殆どの場合原因は本人にあるようにも見える。